稀な薄窓

2007年12月15日(土)

稀な薄窓
それはArpeggioする水たちのわらひ

これはたんぐすてんあかるい水族館の内部である
このさびしいひかりにゆれる水のなかに 軍艦のような夢おほいほてるを営み そのほてるのなかに もつとも空気の明瞭にみられるためのひとつの窓をあけ このさびしい水にゆれ このさびしい水にふかれ この青い水のなかに青く花ひらいてゐるわたくしたちふたりである
ふたりはいつも浴室のなかから泳ぎゆくがらすたちをながめ きらびやかな衣裳をつけては時間と鏡のまへに礼儀ただしい敬礼を愛した
ふたりはよく知ってゐる ぴすとるが白粉のようにくづれてしまったのを それは海のなかにあたかも魚族のまぐねつしやかとも

またそのなかにふたりは夢みた
ひとつの白い噴水からその無限に遠いひとつの白い噴水へ
ひとつの白い花からその無限に遠いひとつの白い花へ
ひとつの白い魚からその無限に遠いひとつの白い魚へ
ああそのためにふたりはなほも夢みた
そのためのそのあひだにある無数の白い噴水たち
そのためのそのあひだにある無数の白い花たち
そのためのそのあひだにある無数の白い魚たち

だがいまはあまりにひさしく住んでゐたふたりだから もはや青いぼすふおらすの海に死にゆくかんがへにもあいてしまひ いまはその女性の胸にかかつた美麗な三日月をさびしがり
ふたりはふいるむのような水のなかをすぎてきた白い微風にがらすのやうな衣裳をまかせ
ふたりはふいるむのような水のなかをすぎてきた白い小鳥にがらすのような愛撫をあたへ
遠い噴水の衣裳をつけたその女性と ふりゆうとのさきに青い魚を灯もしたわたくしはやがて ながいはてしもないやるせない性の祭りを舞ひ始めるのである
ふたりは腕に魚をとらへ
ふたりは足に魚をとらへ
ふたりは腰に魚をとらへ
ふたりはあまりに魚をとらへ 水族館にあまりひさしく住んでゐたふたりだから もはや青いぼすふおらすの海に死にゆくかんがへにもあいてしまひ しづかに花たちのさしだした名刺に 笛で語りおはると 青いこの水族館の玻璃を透して 透明に笑つてしまつた