ドングリの並木道

2010年10月12日(火)

ドングリの実が一粒
私のベレー帽の上に落ちた
ペンキの剥げたベンチの上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドングリの並木道
木のベンチが幾つかあった
真新しい緑のペンキに塗られていた

それは私の通学路だった
私は絵を勉強していた
ドングリの並木道を描いていたんだ

「痛い」という声が隣で聴こえた
そこに彼女が座っていた
麦わら帽子にドングリが落ちたんだ

「大丈夫ですか」と声を掛けた時だった
私の黒い学生帽にもドングリが落ちて来たんだ
私も「痛い」と言い 二人は笑った

その日から毎日 彼女とベンチに座った
それは彼女の通学路だったんだ
彼女は小説を読み 私は彼女の絵を描いた

毎日 彼女の絵を描いた
毎日 少しずつ絵が出来ていった
何枚もの絵が出来ていった

日に日に寒くなっていた
カーディガンがセーターになり
セーターがダッフルコートになった

秋も終わりに近づいた日
両手一杯のドングリを彼女がくれた
彼女を見たのは それが最後だった

「また明日」と微笑みを残して
遠い街に行ってしまった
父親が転勤になったそうだと噂に聴いた

雪の中 私はベンチに座って待っていた
また彼女が戻ってくると信じて
彼女の絵を描き続けた

やがて一年が過ぎ
またドングリの季節だった
私は高校を卒業していた

ベンチの上に麦わら帽子が置いてあった
ドングリの実が一杯に入っていた
「ごめんね」と書かれた手紙が入っていた

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