開かないドア、割れたガラス

2007年9月28日(金)

彼女はドアをノックした
彼女はドアを何度かノックした
彼女は鍵穴から覗いてみた
彼女はドアの下に手紙を滑らせた
彼女は午前三時にベルを鳴らした
彼女は壊れる程、取っ手を揺さぶった
彼女は修理工を連れて来た
彼女は針金を鍵穴に差し込んだ
彼女はドアを爪で引っ掻いた
彼女はドアにもたれて号泣した
彼は心を開かなかった
彼女はドアを蹴り飛ばし、泣きながら家に帰った

寂しくなり、彼は彼女を訪れた
ガラス越し、二人は手と手を重ね合わせた
「君の手は冷たい」と言い、彼はガラスを傷付けた
「もう来ないで」、彼女は二人のガラスを叩き割った
破片は彼の心を傷つけ、血の様な涙が流れた
「ごめんなさい。お願いだから行かないで」
彼女は必死に愛の破片をつなぎ合わせた
ひび割れたガラス越し、二人には互いがもう見えない
やがて彼もガラスを割り、そしてまた、つなぎ合わせた
粉々に砕け散った、テープだらけの二人の関係
不完全なパズルの様な、つぎはぎだらけの二人の愛憎
ガラス遊びに疲れ果て、傷だらけ、血まみれ
いつしか二人は別れていた
破片の様に散らばった、涙だけを後に残して

風の通り道

2007年9月26日(水)

それは瞬間
それは一年
それは青春
それは永遠そのもの

それは薄暗い路地
それはローヌ河の流れる街
それはフランス
それは世界そのもの

それは口づけ
それは彼女
それは女性
それは人間そのもの

それはje t’aime
それは僕達の言葉
それは一編の歌
それは抑えられない想い

それは全てを持っていたということ

それは永遠
それは青春
それは一年
それは瞬間、只、それだけ

それは世界
それはフランス
それはローヌ河の流れる街
それは薄暗い路地、只、それだけ

それは人間
それは女性
それは彼女
それは口づけ、只、それだけ

それは抑えられない想い
それは一編の歌
それは僕達の言葉
それはje t’aime、只、それだけ

それは全て過ぎ去ったということ

枯葉

2007年9月24日(月)

茶色い落ち葉が音を立て
二人は寄り添って後にする
白い木枠の窓にはまった
大きなレンガ造りの学び舎を

黄色い落ち葉が音を立て
手の中の手をたぐり寄せる
二人は抱擁の中、身を傾げる
柔らかな毛糸の中に顔をうずめる

赤い落ち葉が音を立て
そっと、二人は唇を重ねる
森の中を通り過ぎる秋風が
ふと、一対の花を触れさすように

家族

2007年9月23日(日)

彼女は目を覚ます
彼女は大声で泣く
彼女はミルクを飲む
彼女はニコリと笑う
彼女はミルクを吐く
彼女はまた泣く
そして、彼女は眠る

君は起こされる
君はミルクを温める
君はミルクを飲ませる
君は抱っこをする
君は下で洗濯をする
君はご飯を作り始める
そして、君は皿を洗う

僕は車を運転する
僕は電話に答える
僕はEメールを打つ
僕は同僚の相談に乗る
僕は客先へ出掛ける
僕は「疲れた」と言う
そして、僕は晩飯を食べる

彼女が寝てる間
僕達は少し、話をする
僕達は少し喧嘩し
君達は眠ってしまう
仕事を幾つか終わらせるけど
やっぱり、僕も眠くなって
そして、僕もベッドに入る

午前3時ちょうど頃
隣り合わせで眠ったまま
彼女が笑い
君が笑い
そして、僕が笑ってる
一つの同じ夢を見て
彼女が、君が、そして僕が笑ってる夢を見て

私の目

2007年9月3日(月)

涙の通り過ぎた道
虹の架かっていた場所
黒い、黒い隈の跡

喧嘩した日々
使い古した言葉と花束
二人で過ごした長い夜達

涙の通り過ぎた道
虹の架かっていた場所
黒い、黒い隈の跡

喧嘩した日々
使い古した言葉と花束
二人で過ごした長い夜達
そして、素晴らしい歳月

微笑みの皺が刻まれた目で
私はあなたを見詰めている

ボートから顔を上げ
あなたが、ふと振り返るから
私は、その目で目配せをする

いつか、あなたが愛し、なぞった
眉毛のゆるやかな曲線の下

一日中、レクイエムを聴く様に
僕は雨音を聴いている

一日中、雨音を聴く様に
僕は君のさよならを聴いている

一日中、君のさよならを聴く様に
僕は切れた電話を聴いている

一日中、切れた電話を聴く様に
僕は君のさよならを聴いている

一日中、君のさよならを聴く様に
僕は雨音を聴いている

一日中、雨音を聴く様に
僕はレクイエムを聴いている

シクシク
ザーザー
サヨナラ
ツーツー

ツーツー
サヨナラ
ザーザー
シクシク

何故なら、また、恋も死にゆく