バルバラ(訳:佐藤洋平)
2007年7月21日(土)
思い出してごらん、バルバラ
その日、ブレストには、ひっきりなしに雨が降ってた
そして、君は微笑みながら歩いてた
晴れやかに、歓喜して、びしょ濡れで
雨の中を
思い出してごらん、バルバラ
その日、ブレストには、ひっきりなしに雨が降ってた
そして、シャム通りで僕は君とすれ違った
君は微笑んでて
そして僕もまた、微笑んでた
思い出してごらん、バルバラ
僕の知らなかった君
僕を知らなかった君
思い出してごらん
とにかく、その日を思い出してごらんよ
忘れないで
男がポーチで雨宿りしていた
そして、彼は君の名を叫んだ
バルバラ
そして、雨の中、君は彼の元へ駆け寄った
びしょ濡れで、歓喜して、晴れやかに
そして君は彼の腕に飛び込んだ
それを思い出してごらんよ、バルバラ
僕が君を君と呼んでも恨まないで
僕は好きな人達を皆、親しく呼ぶんだ
たとえ一度しか会ったことがなくても
僕は恋している人達を皆、親しく呼ぶんだ
たとえ彼等を知らなくても
思い出してごらん、バルバラ
忘れないで
この、おとなしく、幸福な雨を
君の幸福な顔の上に降り
この幸福な街の上に降る
海の上に降る、この雨を
兵器工場の上に
ウェッサンの船の上に降っている
ああ、バルバラ
戦争とは何と愚かなことだろう
今、君がどうなってしまったか
この鉄の雨の下で
火の、鋼鉄の、血の雨の下で
そして君を抱きしめていた彼
愛情を込めて
彼は死んだの、何処なの、それともまだ生きてるの
ああ、バルバラ
ブレストには、ひっきりなしに雨が降ってる
かつて雨が降ってた様に
でも全ては壊され、もう同じじゃない
これは怖ろしい、悲しい哀悼の雨だ
これは雷雨でさえない
鉄の、鋼鉄の、血の雷雨でさえ
只の雲々だ
犬の様に野垂れ死に
行方知らずとなる犬の様に
ブレストの川沿いで
そして、遠くで腐敗してゆく
ブレストから、遠く、ずっと遠く
何も残らないブレストから
2008年12月22日(月) at 10.30
大学時代、キャンパスで見たポスターに、
「ああバルバラ 戦争とは何たるいやらしさ
いとおしげに君を抱きしめた あの男は 戦死か
それとも行くえ不明か」
とあって、なぜか私は必死にこの言葉を胸に刻み、
その後の人生を歩んできました。
それは、この詩なのでしょうか。
記憶違いとは思いますが、そのポスターには、
作者は「ブリューゲル」とあったような気がします。
2008年12月25日(木) at 15.24
最近、詩と接する余裕が無い程、忙しくしており、更新が滞っていました。それでも、コメント頂き、ありがたく思います。
お話の詩は間違い無く、この詩だと思われます。そして、この詩はプレヴェールの代表作の一つです。
ご参考まで、原文です:
http://yoheisato.wordpress.com/2007/07/21/barbara/
ブリューゲルという名前は正直知りませんでしたが、有名な画家の様です。もしかすると、そのポスターの絵がブリューゲル作であったのかもしれませんね。