コーヒーが冷めてしまう、その前に
好きなら好きと言って欲しい
だってほら、人生はこんなにも短い
ミルクの様に絡み合い、二人はきっと溶け合える

あの5月の午後から
毎日の様に私達は訪れた
石畳の広場の、このカフェテラスに

私達は注文を繰り返し
足元の鳩達をすっかり手なずけ
行き交う人々を眺め
大聖堂の鐘が何度も鳴り

来る日も、来る日も、飽きることなく
私達は恋愛を語り、青春を謳った

夏が過ぎ、青春が過ぎ、恋愛が過ぎ
秋の、か細い手が枯葉を落とし
広場を哀愁でカーキ色に満たした

二人が冷めてしまう、その前に
愛が消えたのならば、そう言って欲しい

コーヒーが冷めてしまう、その前に
だってね、心温まれば、まだどうにかなる気がする

一人テーブルに残されて
きっと涙より惨めなことだから

冷たいコーヒーを飲み干すなんて
それは、それは惨めなことだから

足元に鳩達が群がり、
大聖堂の鐘が鳴る

コーヒーカップの中の
私の幸福と悲しみに

大人の活用形

2007年7月29日(日)

いきそう・・・
いこうね

いくわ・・・
いくよ?
いく!
いっちゃう!!

いっちゃった・・・

いった・・・?
いかなかったの?

いかせてあげる・・・

いける?
いけるかな?
いきそう?
いく?
いっちゃうの?
いって!

いっちゃった?

バルバラ(訳:佐藤洋平)

2007年7月21日(土)

思い出してごらん、バルバラ
その日、ブレストには、ひっきりなしに雨が降ってた
そして、君は微笑みながら歩いてた
晴れやかに、歓喜して、びしょ濡れで
雨の中を
思い出してごらん、バルバラ
その日、ブレストには、ひっきりなしに雨が降ってた
そして、シャム通りで僕は君とすれ違った
君は微笑んでて
そして僕もまた、微笑んでた
思い出してごらん、バルバラ
僕の知らなかった君
僕を知らなかった君
思い出してごらん
とにかく、その日を思い出してごらんよ
忘れないで
男がポーチで雨宿りしていた
そして、彼は君の名を叫んだ
バルバラ
そして、雨の中、君は彼の元へ駆け寄った
びしょ濡れで、歓喜して、晴れやかに
そして君は彼の腕に飛び込んだ
それを思い出してごらんよ、バルバラ
僕が君を君と呼んでも恨まないで
僕は好きな人達を皆、親しく呼ぶんだ
たとえ一度しか会ったことがなくても
僕は恋している人達を皆、親しく呼ぶんだ
たとえ彼等を知らなくても
思い出してごらん、バルバラ
忘れないで
この、おとなしく、幸福な雨を
君の幸福な顔の上に降り
この幸福な街の上に降る
海の上に降る、この雨を
兵器工場の上に
ウェッサンの船の上に降っている
ああ、バルバラ
戦争とは何と愚かなことだろう
今、君がどうなってしまったか
この鉄の雨の下で
火の、鋼鉄の、血の雨の下で
そして君を抱きしめていた彼
愛情を込めて
彼は死んだの、何処なの、それともまだ生きてるの
ああ、バルバラ
ブレストには、ひっきりなしに雨が降ってる
かつて雨が降ってた様に
でも全ては壊され、もう同じじゃない
これは怖ろしい、悲しい哀悼の雨だ
これは雷雨でさえない
鉄の、鋼鉄の、血の雷雨でさえ
只の雲々だ
犬の様に野垂れ死に
行方知らずとなる犬の様に
ブレストの川沿いで
そして、遠くで腐敗してゆく
ブレストから、遠く、ずっと遠く
何も残らないブレストから

Barbara

2007年7月21日(土)

Rappelle-toi Barbara
Il pleuvait sans cesse sur Brest ce jour-là
Et tu marchais souriante
Épanouie ravie ruisselante
Sous la pluie
Rappelle-toi Barbara
Il pleuvait sans cesse sur Brest
Et je t’ai croisée rue de Siam
Tu souriais
Et moi je souriais de même
Rappelle-toi Barbara
Toi que je ne connaissais pas
Toi qui ne me connaissais pas
Rappelle-toi
Rappelle-toi quand même ce jour-là
N’oublie pas
Un homme sous un porche s’abritait
Et il a crié ton nom
Barbara
Et tu as couru vers lui sous la pluie
Ruisselante ravie épanouie
Et tu t’es jetée dans ses bras
Rappelle-toi cela Barbara
Et ne m’en veux pas si je te tutoie
Je dis tu a tous ceux que j’aime
Même si je ne les ai vus qu’une seule fois
Je dis tu a tous ceux qui s’aiment
Même si je ne les connais pas
Rappelle-toi Barbara
N’oublie pas
Cette pluie sage et heureuse
Sur ton visage heureux
Sur cette ville heureuse
Cette pluie sur la mer
Sur l’arsenal
Sur le bateau d’Ouessant
Oh Barbara
Quelle connerie la guerre
Qu’es-tu devenue maintenant
Sous cette pluie de fer
De feu d’acier de sang
Et celui qui te serrait dans ses bras
Amoureusement
Est-il mort disparu ou bien encore vivant
Oh Barbara
Il pleut sans cesse sur Brest
Comme il pleuvait avant
Mais ce n’est plus pareil et tout est abîmé
C’est une pluie de deuil terrible et désolée
Ce n’est même plus l’orage
De fer d’acier de sang
Tout simplement des nuages
Qui crèvent comme des chiens
Des chiens qui disparaissent
Au fil de l’eau sur Brest
Et vont pourrir au loin
Au loin très loin de Brest
Dont il ne reste rien.

7秒のファーストキス

2007年7月15日(日)

僕等はよそ見していた方が良い
5月の風が、彼等を優しく包んでいるのだから

僕等は立ち去った方が良い
だって、彼等は手に腕を取り合っている

僕等は気付かなかったことにした方が良い
彼等は飽きることなく、見詰め合っているから

そして、そして、甘く激しい赤い波が
遠く、遠く、うねる二人をさらって行く
戯れと、躊躇いは色褪せて行き
一つの恋となって生まれ変わった

取り返しのつかない出来事
怖ろしい二人の秘密
決壊し尽くした堤防
漂流した二人の小舟

それでも口ずさまれた旋律の様に
魔法は唇のあたりに漂っている
小鳥の様に危なっかしく止まっている
二つの赤い接点の上には

境界線の心象

2007年7月15日(日)

青空では、どす黒い雨雲が立ち上がり
雲間からは、無数に太陽の柱が射している

地平線では、延々と麦畑がうねり
収穫を待つようでも、枯れ腐り果てたようでもある

原色が色彩鮮やかに舞いながら、
瞬時の内に、色褪せて死んで行く場所

煮えたぎる様に暑いようでも
凍えるように寒くもある

胸騒ぎの様な雑踏の、耳をつんざく音の中
何とも耐え難い孤独感に満ち溢れている

全ての相反するもの達が
いがみ合いながら、調和の中で共存している

そこに不安定に揺れながら、しかし力強く
一本の案山子が立っている

骨の様に軋みながら、天秤の様に
その両腕は完璧な均衡を保っている

破れた帽子の縁で黒い鳥を支え
上空に白い鳥を旋回させている

遥か遠くの様でもあり、
まさに目の前のようでもある

始まりであり、終わりの場所で
その案山子は立ち続ける

片目を閉じ、傾げられた、その顔は
見るも恐ろしく、とても見ずにはいられない

神の様でも、悪魔の様でもあり
神父の様でも、人殺しの様でもあり
正直者の様でも、大ぼら吹きの様でも
胎児の様でも、死顔の様でも
肥えている様にも、痩せこけている様にも、
笑っている様にも、泣いている様にも
全知の様にも、白痴の様にさえ

そして私にも似て、あなたにも似て
全ての者の顔をしている

「良く生きた者だけが、良く死んで行く」

破れた胴体の上にしっかりと、
かすかに読み取れる落書きがされている

偶像の様に崇め、花を捧げることも
仇の様に唾を吐き、蹴り倒すことも出来るが
私は、その顔を見詰める
空模様を伺う農夫の瞳で

私は、その場所を二度通る

その入口を、
母に連れられて、赤子の時分
最初の日に

その出口を、
重い思い出に丸まった老人の背中で
最後の日に

否、その場所を離れたことなど
一瞬たりとも無かった

私自身が、その案山子なのだから

逢引

2007年7月9日(月)

9月22日21時半
NEGRESCOホテル前