水車
2007年5月31日(木)
小川が流れて
水車は回って
涙が落ちて
水車が回って
涙は落ちて
小川が流れて
涙が落ちて
小川は流れて
水車が回って
毎日が回って
季節も回って
人生がぐるぐると回って
小川が流れて
水車は回って
涙が落ちて
水車が回って
涙は落ちて
小川が流れて
涙が落ちて
小川は流れて
水車が回って
毎日が回って
季節も回って
人生がぐるぐると回って
おじさん
2007年5月31日(木)
妻を捨て、
おじさんは若い女に乗り換えた。
白髪の妻よりフロリダのブロンド娘。
おじさんは得をしたと思ってる。
銀を金と交換した。
僕はおじさんが損をしたと思ってる。
プラチナを金と交換した。
否、染めているから金メッキとだ。
青春と名乗る手品師
2007年5月31日(木)
シルクハットから初恋が出た
初恋は白い鳩になって飛び立った
苦しそうに咳き込んだと思ったら
喉の中から何十もの詩が連なって出て来た
左ポケットから恋文を出した
ポンッと叩くと花束に変わった
でも彼女に渡した途端
花束はボッと燃えて無くなった
悩みが一つ胸ポケットから転がり落ちた
拾い上げた細い指の間
悩みが二つ、四つ、八つに増えた
箱に一人閉じこもると
彼女に鍵を掛けられ
剣で二十も心臓を突き刺された
それでも箱が燃える前に生還した
彼女の涙をダイヤに変えた
消えた花束が彼女のスカートから出て来た
拍手とキスと拍手を貰い
恭しく頭を下げて退場した
種明かしはしなかった
のんだくれ
2007年5月31日(木)
のんだくれ
杯を空け
瓶を空け
財布も空けた
すわった眼のまま
最後の瓶を覗き込んだ
瓶の底
泣いているお前がいた
のんだくれ
腰をあげ
ドアを開け
家へと帰った
ちょびひげ
2007年5月31日(木)
青春がやって来た
山高帽をちょこんとかぶって
ちょびひげを生やして
きつきつのチョッキを着て
よくしなるステッキをぶん回して
だぶだぶのズボンと靴を履いて
盲目の少女に花を手渡した
あの音楽が流れた
笑わせ泣かせ
泣きながら笑わせた青春
滑稽で真剣な青春
無口で白黒な青春
僕の青春がやって来た
あれから十数年になるだろうか
まだ彼は僕の中で夢見ている
相変わらず僕の中で恋している
死の死
2007年5月31日(木)
マイナスのマイナスがプラスならば、
生、
私は死の死を生きている。
いつか死が蘇る時、
その時こそ私は死ぬのだ。
お前が死んだ時に生まれた私は。
死よ、
私の生はお前に挟まれる。
まるでオセロ遊びのように。
白であろうと黒であろうと私は負ける。
そして私自身がお前の色に蒼ざめる。
お前の命は全く無限だ。
やがて長く短い反抗は終わり、
家出した子は物静かに帰郷する。
しかし今は死よ、
振り子の振動のように、
より天秤の皿のように、
私達二人は一対の他人だ。
用途
2007年5月31日(木)
折れたマッチ
ライターを借りられる時に
止まった時計
白昼夢を見ている時に
壊れたテレビ
話したい人がいる時に
空の酒瓶
恋に酔っ払っている時に
燃え尽きた煙草
禁煙しようとしている時に
読んでしまった推理小説
これ以上サスペンスは要らない時に
鍵の無い錠
隠す秘密が無い時に
穴の開いた下着
裸で二人愛し合う時に
割れたグラス
らっぱ飲みしか出来ない時に
すっからかんの財布
プレゼントを買う必要の無い時に
疵だらけのレコード
一人静かにしていたい時に
冷めたコーヒー
毎日がほろ苦い時に
浮気な恋人
恋なんかうんざりな時に
挫折した人生
勇気を奮ってやり直す時に
君の夢が僕の現実
2007年5月31日(木)
中国では月祭りの夜だった。
僕は月を見に外へ出た。
月光に照らされて、
子猫が一匹道路の上に潰されて、
静かに静かに死んでいた。
ねぇ、君なら知っている。
暗闇の海を、
月や星を積んだ船が何処へ行くのかを。